ヒトでの安全性や有効性を確認する前には、非臨床試験が必要です。これは薬として開発する価値があるかどうかを培養細胞や動物を使って、その薬の有効性(薬効)と安全性(毒性)の両面を確認するものです。
特に安全性試験の実施方法や記録については、その試験結果の信頼性を確保するためにGLP(ジーエルピー:Good Laboratory Practice)という実施基準が定めらています。日本では、「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」が厚生労働省から通達されています。
また、この段階は前臨床試験(フェーズ0)とも言われ、平均3~5年かかります。
この段階で得られた有効性と安全性の試験結果を十分に検討し、ヒトに投与しても安全性が確保され、また、患者さんでの臨床試験では、患者さんに何らかのメリットがある場合に、初めてヒトを対象とした臨床試験に進むことができます。
臨床試験には、1期(第Ⅰ相あるいはフェーズⅠなどと呼ばれます)から3期(第Ⅲ相あるいはフェーズⅢ)の試験があります。ヒトを対象とした試験ですので、倫理的にも科学的にも、厳格なルールのもとに実施しなければなりません。
世界共通の原則としては、ヘルシンキ宣言「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」があり、この原則をもとにGCP(ジーシーピー:Good Clinical Practice)という実施基準が定められています。日本ではGCP省令と呼ばれる「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」が厚生労働省から通達されています。この省令は、厚生労働省から薬の承認を得るために実施する臨床試験に対する基準で、この臨床試験のことを「治験」(治療の臨床試験)と呼びます。
また、臨床試験に参加していただく健康な成人(健常成人といいます)あるいは患者さんに、試験の目的、方法、予想される効果や副作用などを説明し、インフォームド・コンセント(自由意思による同意)を得ることが必須となっています。
一般的に臨床試験の各段階は以下のようになり、これらの臨床試験には、平均で3~7年かかります。
第Ⅰ相試験では、自由意思に基づき志願していただいた少数の健常成人を対象に、薬になる可能性のある薬剤を少量から段階的に増量し、薬物動態(薬剤の吸収・分布・代謝・排泄)と副作用などの安全性を確認します。
ただし、抗がん剤など正常細胞にも障害をもたらす可能性のある薬剤では、標準治療に無効で他に有効な治療法がない患者さんから治験参加の希望者を募り、有効性も探索的に調査します。
第Ⅱ相試験では、少数の患者さんを対象に、安全性が担保され、どれくらいの量や回数が最も有効性を示すかを確認します。
第Ⅲ相試験では、多くの患者さんを対象に、すでに販売されている他の薬剤と比較して有効性と安全性の検証を行います。
薬の効果性と安全性が確認され、患者さんの健康回復に貢献できると判断されれば、これまでのすべての試験の結果をもとに厚生労働省に承認申請を行います。学識経験者などで構成する薬事・食品衛生審議会などの審査を受け、承認されると製造販売することができます。
人の生命・健康に関することですから、その審査は非常に厳しく承認されないこともあります。一般に承認申請から製造販売の承認を得るまでに平均1~2年かかります 。
薬が発売されたのちは、多くの患者さんに使用されますが、開発段階や承認審査段階で予測のつかなかった副作用や効果が現れることがあるため、これらを慎重に監視し、その結果を厚生労働省や医療関係者に報告することが義務付けられています。
さらに、開発段階では把握できなかった薬の効果と安全性を調べるために、製造販売後調査や第Ⅳ相試験と呼ばれる臨床試験を実施する場合もあり、これらの調査や試験結果から薬の改良や改善が行われ、新しい治療薬開発への道が開かれることもあります。
このように薬は長いプロセスを経て安全性と有効性が繰り返しチェックされ、より安心できる、効果の高い「くすり」へと成長していきます。