メルクセローノでは、腫瘍細胞や患者さんの特性をより細かく分類するバイオマーカーを用いた薬剤開発により、個別化治療を推し進めています。ゴールにはまだまだ到達していませんが、治療前に薬剤の効果が最も期待できる患者さんを特定することが目的です。
また、がん治療薬を開発する上で、鍵となるのは「腫瘍細胞」、「腫瘍環境」、「免疫システム」の3つを標的としたがん治療薬コンビネーションです。メルクセローノはこれら3つを標的にして研究開発に取り組んでいます。以下にそれぞれの標的について説明します。
「腫瘍細胞」
腫瘍細胞に対してその増殖を阻止することも一つの方法ですが、腫瘍細胞を消滅させることが、がん治療の最も重要な目標です。メルクセローノは、新しい作用機序により腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤の開発を継続して行っています。
「腫瘍環境」
抗がん剤によって腫瘍細胞を直接攻撃するだけではなく、腫瘍細胞が増えないように腫瘍細胞を取り巻く環境を変える方法もあります。一度できた腫瘍細胞は、生き残るために周囲の毛細血管を増殖させたり、別の場所で生きようと転移したりします。これらを阻止することは、がん治療においてますます脚光を浴びています。メルクセローノは、血管新生を阻害するなどの作用を持つ薬剤や、インテグリンという細胞接着分子に対するモノクローナル抗体などの薬剤を開発しています。
「免疫系」
もう一つの方法として、患者さん自身の免疫機能を高めてがんに対抗する免疫療法があります。メルクセローノでは、この分野の一つであるがん治療ワクチンの開発に取り組んでいます。
メルクセローノのバイオ治療法と免疫療法における開発の実績は、関節疾患・自己免疫疾患領域での新しい治療薬開発の可能性を広げました。現在この分野での研究の中心は、自己免疫疾患や炎症性疾患を起こす仕組みを調節する薬剤を発見することです。
現在進行中の革新的な研究開発プロジェクトとして、遺伝子組み換えたんぱく質であるヒト型FGF 18(線維芽細胞増殖因子)があります。このFGF 18は軟骨細胞の増加や軟骨性組織を修復する作用があり、変形性膝関節症(*1)や軟骨損傷の治療薬として評価中です。また、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)(*2)の治療薬として、アタキセプト(Atacicept)という薬剤を開発しています。
この治療領域では、そのほかにも関節リューマチ(*3)、ループス腎炎(*4)、シェーグレン症候群(*5)などについて研究を行っています。
*1 変形性膝関節症: 膝関節のクッションの役目を果たす軟骨組織が長期間に少しずつすり減り変形し、膝に痛みが発症したり歩行障害になったりします。
*2 全身性エリテマトーデス: 自己の免疫細胞が全身のさまざまな場所を攻撃する病気で、発熱、全身倦怠感などの全身症状と、関節、皮膚、内臓などにさまざまな症状が一度に、あるいは次々に起こります。
*3 関節リューマチ:自己の免疫細胞が主に手足の関節を攻撃する病気で、関節のこわばりから始まり、関節痛の発症をへて、重症になると関節が変形します。
*4 ループス腎炎: 全身性エリテマトーデスに含まれ、特に腎臓に障害が出るものをループス腎炎(糸球体腎炎)といいます。たんぱく尿や浮腫(むくみ)の症状がみられ、腎不全の原因となります。
*5 シェーグレン症候群: 涙腺や唾液腺の分泌に障害が起こり、目の乾燥(ドライアイ)や口の乾燥(ドライマウス)を引き起こします。
メルクセローノは不妊治療領域におけるパイオニアです。最初の注射用ヒト性腺刺激ホルモンは1950年にイタリアで承認されました。この生殖ホルモンは、他の欧州諸国では1960年代に、米国では1970年代に発売され、これによって、排卵機能不全による不妊の治療を初めて大規模に行えるようになりました。
1990年代には遺伝子組み換えバイオテクノロジーの最前線に立つ製薬会社となり、より純度の高い生殖ホルモン製剤を製造することを可能にしました。
メルクセローノは、不妊に悩む夫婦の「子供を持ちたい」という夢の実現をお手伝いするために、卵胞発育から妊娠初期まで、生殖周期のすべての段階における治療薬の研究開発を行っています。今後も不妊治療領域における技術革新に力を注ぎ、この分野で世界をリードする製薬会社であり続けます。
内分泌代謝領域では、成長ホルモン障害などのように、まだまだ改善しなければならない領域に焦点を絞った医薬品の開発を行っています。たとえば、長時間効果が持続し、患者さんへの注射回数が少なくてすむ成長ホルモン製剤について臨床試験を実施しています。また、性別や年齢など患者さん個々人の条件を考慮した層別化医薬品にも取り組んでいます。現在、成長ホルモン療法で小児に対する正確な薬剤投与量を決定するため、PREDICTと呼ばれる試験を行っています。